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植生の方向性 ~時間が意味すること~

 

 

畑や森で目にする植物は毎日、毎年同じ

ことを繰り返していくだけのように見え

ます。
「植物の方向性」でも触れたように、植

物は芽を出して太陽と地球の要素を取り

込み、朽ちていく。
ではこれが100年先、1000年先は

どうか?
実は、目の前の景色は時間を経て新たな

植生へと進化していきます。これは右の

図にあるような時間経過に伴う植生遷移

です。


この図の一番左の裸地というのは、何も地球創世記の時代ではありません。割と最近、と言っても今から3万年前から1万年前の話です。そのころ関東地方では、榛名山、浅間山の活動が活発化したため、いたるところに火山性の泥流や火山灰の降灰がありました。約1万年前の縄文時代になって、活動が収まり、ススキなどの草本類が繁茂しました。

縄文時代にはこのススキ野などを利用した焼畑が行われていました。それから時代を経て、植生は今私たちが見ている風景へと遷移してきたのです。

 

でも、毎年のように雑草が生えてエネルギーやミネラルを蓄積しているというのに、わざわざ野球の打順のように打者(主となる植生)が変わって行くのはなぜなのでしょうか?

 

ここでもやはりエネルギーやミネラルの蓄積がカギになります。これを簡易的に表したのが下の図です。植生遷移の順番には意味があり、それぞれの植生に役割があります。

 

最初に出てくる地衣類は岩石に張り付き

ミネラル分を溶出させる能力にたけてい

ます。ここである程度の有機物とミネラ

ルが地表に蓄積させると、、
 

2番打者の草本類です。草本類は

生育速度が速く、強い根を活かし

て土の深いところまで分解性しや

すい有機物を供給します土の表

面だけでなく数十センチ~1mく

らいまで有機物含量が増加します。


 

3番打者は陽樹です。木本類の特徴は光合成産物が硬く分解しにくいリグニンなどの高分子炭素化合物として樹体内に保存されることです。ミネラルなども同様です。草本類の光合成エネルギーは、土壌表層に毎年還元されますが、木本類の場合、吸収されたエネルギー(光、ミネラル)の大半が生物(樹木)の内部で安定的に保存されることが大きくことなります。
 

因みに、陽樹とは生育に最低限必要な光合成量が比較的多いタイプの樹木のことで、草本類のはびこる草むらの植生に侵入します。
 

4番打者である陰樹は、光に対する要求性が比較的低い樹木です。
つまり光エネルギーに対する燃費がよく日陰でも発芽、生育するため森の中で徐々に優位になっていくことができます。森では林床が暗いだけでなく、突発的な雷や古くなった樹が倒れることもあります、このような条件では陽樹に任せていては光が草本などにとられてしまいます。モミの木の森やツンドラの針葉樹林がその例です。
森が森のまま継続してエネルギーを蓄積する方に遷移がおこり、陰樹が優位となったと言えます。

 

このように、植生の変遷が起こるのはよりエネルギーを安定的な形で長期間保存する方向に向いているためということが分ります。


ただ、極相の樹木はある程度の年月を過ぎると、光合成量が低下するため、植生全体の1年間の光合成量はおそらく他の植生に劣は保存する傾向が強く、新たなエネルギー蓄積は限られているという事になります。

 

さて、最初の地衣類が優先する時代から最低でも3万年も経っているのに私たちは陰樹に囲まれることなく生きています。これまでの植生遷移の中に私たちの祖先である猿は草本~陽樹林までの植生にしか分布していません。他の多くの高等動物もしかり。陰樹に囲まれいきていけなくなる日がこの先やってくるのでしょうか?

 

実は地球の物語である植生遷移の話は、地域により最後の極相のページが異なります。亜熱帯にある日本はというと極相は照葉樹林帯から北は針葉樹林帯、アメリカなどには草地が極相となる乾燥地もあります。これは緯度や降水量などにより蓄積できるエネルギー量、安定的なエネルギーの保存状態が異なるためと考えられます。

動物はというと草本から陽樹林の植生に存在し、エネルギーやミネラルを保持循環させ、植生を安定させているかのようにふるまいます。(多少ここは説明不足ですが、後から書き加えられればと思います)

つまり植生や動物も含めた生態系というのは地球上のエネルギー保存方法の形態であり、その形態自体も地球の進化と共に発展してきたのです。

これからの地球でもその形態に進化が起こる可能性があり、どんな系が発展するのか、想像は尽きません。ただ一つ確かなのは、その主役は生物であると言うことでしょう。

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