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土の炭素貯蔵

12月の頭に、フランス・パリで気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)が開催されパリ協定が締結された。温暖化防止に向けた新たな国際的な枠組みだそう。

具体的な取り組みとしてはざっくり2つ。

1)ガソリンの燃焼や火力発電によるCO2の排出を減少させること、つまり低燃費の車、水素エンジン車などの優遇と原子力発電の導入。

2)排出されたCO2を吸収する、または安定的な場所に貯蔵すること、つまり植林や森林の整備と土壌中の炭素(C)含量を増加させること。

この議論の基礎研究をしているIPCCからのデータと報告をうのみにしたとして、、目的と手段は整って見えます。しかし、地球温暖化対策という大義名分を誰がコントロールするかによって物事の結末は変わってしまう。

世界的な合意、と呼ばれるものには企業の利益と強い結びつきがあり、今回もCO2削減やエコをエサに新製品やサービスを売り込みたいという企業側のやる気(?)も、いい意味でも悪い意味でも感じらる内容だった。温暖化で懐が温まる人にとっては、本当の解決など眼中になく、技術革新と市場拡大のチャンスなのだとと。この類の問題は企業や行政主体では長期的には解決を遅らせることになる。

さて、2)の土壌中への炭素貯蔵について。畑であれば土壌中には数%~30%程度の有機物が含まれ、特に日本のような火山灰性の土壌では、有機物の大半は安定した腐植として存在している。先の対策では、これを土壌による炭素貯留として見ているので、温暖化と土がリンクするわけです。

国の研究機関からも炭素率の高い、稲わら、バーク、炭などを土に投入すればよいとするような報告も上がっているようですが、、

だったら地中深くにまとめて埋めるとか、カーボンファイバーなどを恒久的な構造物(建物)の一部などに使用したらどうかと。耕地土壌はゴミ捨て場ではない、無理やり農業と絡めないでほしいというのが私の意見。

耕作土壌が蓄積できる炭素量には適正値があり、多すぎると病害や収量低下が発生、さらには温室効果がCO2の23倍あると言われるメタン発生の可能性もあります(水田は特に)。適正、かつ収量や品質に影響なく、農家側に負担がないカタチでの炭素蓄積などあり得るのでしょうか?

これだけ農業が高齢化し、離農者が後をたたず、私も含め就農した農家も生活がままならないという現状で、炭素を蓄積するために何百キロの有機物を買い取り、自分の畑に投入し、売値はなお市場価格の変動に合わせて安値で販売する農家がどこにいるのでしょうか??

これを推している環境学者や農学者も多いようですが、研究費を獲得する目的の前に現場や現状を無視しているのではと思います。予断を許さない状況なのは、温暖化だけでなく、農地や森の担い手不足も同じです。

流通業者がブランディングの為に環境対策をしている畑から届いた野菜として売るのはメリットがあるかもしれません。が、、、

そもそも、田舎の森や畑では、ただ日課や習慣として森の下草を刈ったり、木の枝打ちをしている村人がいて、それにより森林のCO2吸収能力が維持されてきた歴史がある。畑でも雑草、落ち葉、植物残渣などを長年土にもどし続けている農家がいて、土壌中の有機物含量を無理なく増加させています。やっている本人は「そこが自分の畑だから/森だから」という単純な理由でやっているだけでエコという発想は存在しない。

しかしカーボンオフセットを文化の中で着実に実行してきたのは、そういう人たち。今のところ、CO2吸収源としての農村内での活動の評価はゼロ。ビジネスモデルとして導入された新たなエコ商品やブランドシールにばかり評価がいっているのは、問題解決の本筋からかけ離れ過ぎているように感じます。

もちろん、新しい活動を始めたり、運営している人には高い意識があり、個人としてすばらしいと思います。ただ買う側はどうでしょう。今後、地球温暖化対策というシールが輝やくブランド商品が増え、それを買った人が地球環境に貢献したと思う。この繰り返しが事の解決につながるのでしょうか?

コンビニのレジ横にある募金箱のようなもので、貧しい人に寄付をしたという一時的な高揚感が得られただけで、それが何に使われたのか、本当に問題解決に寄与したのかなど問われない、ただの偽善や見せかけになる可能性が高いでしょう。

アフリカに比べたら森も畑もそう遠くないのだから、自分の目で現状を確かめたり、自分の手で何かできることをやることが第一歩。環境によい商品はプラスアルファで十分、まず自らが主体的に動くことが今消費者に一番必要なことで、長期的には解決への着実な一歩と言えるはずです。

根本的なことですが、本当に地球規模の現象を変えようというのなら商品を買うだけという安易なことで変わるはずがないこと、私たちはそろそろ理解するべきです。

ここ輸入消費大国日本で暮す私たちがお金を払えばなんでも解決できるという安易な思い違いと奢りから脱却し、一人一人が考え、習慣や生き方を変える選択をしなければ、この広い世の中に蔓延している問題はずっと解決しません。

問題解決に最も必要なのは、森でも、畑でも、炭素でも、金でもなく、ただただ人だと思う。

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