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夜にも奇妙な話

イノブタ(害獣)を追い払うために田んぼで米をつくり、年間数十万の赤字を出している。

普通の人がきいたら突っ込みどころが多すぎて理解できないかもしれないが、田舎の村ではよくある話で、実際この話は私の近くの集落で起きている。

私自信田んぼはやったことがないが、畑のそばに田んぼがあるのでかなり切実な状況は伝わってくる。

イノブタというのはイノシシと家畜の豚が交配したもので、養豚場から脱走した豚がもとと言われている。そのためイノシシに比べ繁殖力が高く、おそらくエサの嗜好性もイノシシより幅広い。そのイノブタが茨城県、千葉県では畑や田んぼを荒らす害獣となってかなりの被害を出している。

一晩で畑一面のサツマイモが消えた、、

収穫しようとしていた落花生がすべて掘り返され、食われていた、、

田んぼに入られて稲ごとなぎ倒されたあげく、穂についたイノブタにつく虫や菌で米がダメになった、、

などなどイノブタの被害ネタは枚挙にいとまがない、、

行政は猟友会に委託して罠や猟による対策を講じているが、年々その被害が拡大している。雌1頭が7~10頭ほど子供を産むため、増殖速度に駆除が追い付かない。また農家も猟友会も人手不足、そして後継者不足が深刻化しており、対策強化も見込めないのが現状である。

ただでさえ米の価格が一俵(60kg)1万円を割ることもある状況では、米を売ってもよくて利益ゼロ、悪いと赤字と言われているのに、獣害でさらに事が悪化している。

これを機に田んぼをやめたいと言う人もいるが、なかなかそう簡単にやめられない。田んぼを2年も手をいれずに放置すると雑草がはびこり再起には相当の労力と時間がかかる。ましてやその周りの田んぼを管理する人にとっては雑草の温床となるため、田んぼを止めることは大迷惑、嫌がらせに近い行為にさえなる。

そのため、村のまわりの人を気遣ってしぶしぶ田んぼを続けている人がほとんどだろう。

そのような心理状況の中、イノブタ対策という名目でさらなる重圧が加わる。イノブタを入らせないために田んぼの周囲に数mの間隔で杭をうち、電線をはってつくる電気柵を数キロ張り巡らすのである。 地域の農業事務所や行政がそれを推進していおり、電気柵を提供する地域もあるが、途方もない労力を要する設置は農家が行うしかない。しかも電気柵は雑草が電線に触れると放電してしまうため、つねに雑草が生えないように除草剤を撒かなければならない。

ここでもまた田んぼを放棄地化にしてはならない理由が生まれる。雑草をはやしたら、雑草の温床となるだけでなくイノブタの侵入経路となってしまうのだ。そのため、電気柵を使っている農家は観る限り半年で最低4回はあぜ道に除草剤をまいている、、もっと多いのだろうか。真夏の暑い時期に相当な面積を散布する上、除草剤コストは数万、面積によっては数十万かかる。

ただでさえ採算の取れない米づくりなのに、電気柵や除草剤のコストが赤字を産み、それらを設置、散布する重労働が農家の体力と気力を奪っている。しぶしぶやっていたコメ作りも、ここまでくるとイノブタ対策のためのコメ作りという感覚に陥ってしまう。

この先10年、今田んぼを背負っている60、70代が必死に現役を続けたとしても、その先の後継者はほとんどいない。畑や田んぼが荒れればさらにイノブタやハクビシン、カミツキガメなど害のある生物が増え、一度そうなったら田畑の生産は見込めない。おそらく村から人が消え、害獣が町に表れるようになる。

今の現状では全く解決の糸口が見えない話である。


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